岐阜県白川村 2006年5月3日

 カタクリの花ばたけの上を舞い飛ぶギフチョウを撮影したくて、合掌造りで有名な岐阜県白川村を訪れた。今年は残雪が多く撮影に適した場所はまだ未発生かもしれないと思ったが、ひとくちに白川村といっても発生時期はいろいろなのでなんとかなるだろうということで出かけた。

 連休で混雑することを予想して早めに出かけた。朝は冷え込んでいて道ばたには霜も降りていた。寒い中でも冬枯れの木々の斜面の中に、ところどころサクラの花や新芽をふいている木々があり、春の訪れを感じさせる。

 しかし仰ぎ見る山はまだまだ雪に覆われていて真冬の感じ。 ネット虫屋だった頃、この時期の白川村へは何度も来ているが、やはり今年の雪はかなり多く感じる。

 最初に入ったポイントも雪は多かったが、カタクリはすでにいくつか咲いており、ウスバサイシンも芽吹いている。ギフチョウが発生していることを確信して気温の上がりを待つ。

 9時半頃になってようやくギフチョウが飛び始めた。しかし、まだ不活発で地上で日光浴をしている。

 

 以前に訪れたこの場所はもう少し緩やかな斜面だと記憶していたが、実際はかなり急だった。やはり採集と撮影とは勝手が違う。1時間くらい頑張って撮れた飛翔写真はこれ1枚だけだった。蝶の個体数も多くなく、おそらく2〜3匹が入れ替わって飛んでいるだけのようだった。

 まだ発生の初期で個体数が少ないと判断して、もう少し発生が早い尾根のポイントへ移動してみた。尾根に着くとさっそくゆっくりと飛ぶギフチョウが目に入った。世界遺産の白川郷の合掌造りの集落を望めるこの尾根は手軽なポイントで発生時期も比較的早い。しかし今年はさすがに日陰には雪が残っており、以前のように車で奥まで進入することができなかった。尾根から白川郷を望む。写真館に掲載した白川郷をバックにしたギフチョウの写真の背景もこれくらいに写ってくれればよかったのにと思う。

 尾根にギフチョウが飛んでくるのを待って、背景をいろいろ考えながらいくつもシャッターを切った。青い空、白い雪山を背景に飛ぶギフチョウ。なかなか清楚な雰囲気の写真になった。もう少しギフチョウが大きく写ってくれればなお良かったのに残念。


 

 この場所にはカタクリやショウジョウバカマあるいはスミレのようなギフチョウが好んで吸蜜に訪れる草本は無かった。その代わり数本植えられたソメイヨシノが満開であり、ちょうど見頃だった。この花にギフチョウが訪れた。サクラの枝が下を向いているが、おそらくこの冬の雪で折れたものと思う。

 ちょっと見上げるような高い位置の花にも止まってくれた。マメザクラのようなまばらな花とは違ってソメイヨシノの様に密に花をつけるサクラに止まると本当に花の中に埋もれているように見える。この後、飛んだ瞬間の写真は満足のいく出来だった。

 昼過ぎになり飛び回るギフチョウも少なくなったので、最初のカタクリの斜面に戻ることにした。ギフチョウがカタクリをよく訪れるのは活動の初めの早い時間と、ひとしきり飛び回ったあとの昼下がり。カタクリの斜面を探して歩くと、やはりいました。カタクリで吸蜜中の一匹を見つけた。ただ、飛翔写真までは撮れず、すぐにどこかへ行ってしまいました。

 

 今回、カタクリの花畑の上を舞い飛ぶギフチョウの姿を撮影することは持ち越しになったが、白川村の美しい環境と美しいギフチョウに感謝して、帰途についた。

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