2019年3月19〜26日 鹿児島県奄美大島 オキナワカラスアゲハ
           

 「アカボシゴマダラにはまだ早いのに、何故?」という声が聞こえてきそうだが、オキナワカラスアゲハの奄美亜種とイワカワシジミの春型を主なターゲットとして3月下旬の奄美大島を訪れた。撮影仲間から昨年春の詳細な情報をいただいており、状況はつかめているので心強い。

 はじめに奄美らしい青い空と青い海の写真から掲載するが、実はこのような天候は期間中は2日ほどで、ちょうどそのころ日本列島を見舞った戻り寒波の影響を受け、連日のように黒い雲と冷たい北風が強く吹くという南の島とは思えないような空模様が続いた。蝶の活動も活発ではなく、撮影にはかなりの難儀を強いられたが、撮影終了予定時刻の30分前にはアッと驚くような展開もあり、印象深い撮影旅行となった。


 奄美大島の青い海

 この時期の奄美大島はタンカン(ミカンの一種)の花が咲く頃であり、あちこちで良い香りが漂っている。できればこの花を訪れる春らしい写真を撮りたいものだ。


満開のタンカンの花 奄美大島宇検村 2019年3月21日

 オキナワカラスアゲハの個体数は、昨年よりはかなり少ない様に感じた。これは昨年の同時期より季節の進みが早いことと、あちこちでタンカンが咲いているので吸蜜できる場所が分散したためかも知れない。最初は♂の吸蜜写真を掲載する。

吸蜜するオキナワカラスアゲハ♂ 奄美大島龍郷町 2019年3月26日
吸蜜するオキナワカラスアゲハ♂ 奄美大島龍郷町 2019年3月26日

 この蝶は思ったより敏感で、なかなか落ち着いて吸蜜してくれない。奄美産は沖縄産(名義亜種)より表面の青みが強いようである。

飛翔するオキナワカラスアゲハ♂ 奄美大島宇検村 2019年3月20日
飛翔するオキナワカラスアゲハ♂ 奄美大島宇検村 2019年3月20日

 前翅裏面の白帯は幅広く発達している。これはかってミヤマカラスアゲハとされたこともあるらしい沖縄産のそれが狭いのとは対照的である。

吸蜜するオキナワカラスアゲハ♂ 奄美大島龍郷町 2019年3月26日
吸蜜するオキナワカラスアゲハ♂ 奄美大島龍郷町 2019年3月26日

 タンカンの花から花へと飛び移る姿。やはり今年は撮影適期を少し逸したようで、破損した個体が多かった。

飛翔するオキナワカラスアゲハ♂ 奄美大島龍郷町 2019年3月26日
飛翔するオキナワカラスアゲハ♂ 奄美大島龍郷町 2019年3月26日

飛翔するオキナワカラスアゲハ♂ 奄美大島龍郷町 2019年3月26日
飛翔するオキナワカラスアゲハ♂ 奄美大島龍郷町 2019年3月26日

 奄美産の♀の後翅表赤色弦月紋は強く発達する傾向があり、前述の翅表の青みが強いこと、前翅裏面の白帯が広いことと併せて奄美亜種の特徴とされる。私は1973年に初めて奄美を訪れたが、そのときに採集した♀の赤色弦月紋が特に印象に残っており、そういう♀を撮影したいと思っていた。
 吸蜜している下の♀もかなり赤いが今一歩のようだ。

吸蜜するオキナワカラスアゲハ♀ 奄美大島宇検村 2019年3月20日
吸蜜するオキナワカラスアゲハ♀ 奄美大島宇検村 2019年3月20日

 下の写真の♀は赤色弦月紋が鮮やかに発達している。「ジャスピンは翅が切れる」という法則に従うような写真なのが残念だが、こういうイメージの♀ということで掲載しておく。近くにはタンカンの花が咲いており、アゲハの類が集まっていたが、この♀はそれを避けるように10mくらい離れたムラサキカタバミを訪れた。しかし、とっさのことであまりに近すぎて距離が取れずに画角を外してしまった。もう少し落ち着いて吸蜜してくれればチャンスもあったのだろうが、ムラサキカタバミは蜜が少なかったのか、ごく短時間の静止で飛び去ってしまった。

飛翔するオキナワカラスアゲハ♀ 奄美大島龍郷町 2019年3月26日
 飛翔するオキナワカラスアゲハ♀ 奄美大島龍郷町 2019年3月26日

 このようにオキナワカラスアゲハの撮影は不十分で終わってしまったが、もう一度チャレンジしたいと思っている。

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