2019年4月20日 奈良県御所市 ギフチョウ
           

 低地のギフには遅く、飛騨の山のギフには少し早いこの日、大和葛城山を訪れた。近隣の金剛山ではギフを見たことはあるのだが、こちらの山は初めて訪れる。
 朝、奈良県側からみた葛城山。雑木林も新芽を吹き始めたのか、山肌がうっすらと緑に染まっている。



 この日は朝から好天で気温が上がったので、山の上でも8時頃からギフチョウの飛翔が見られた。カタクリもちょうどきれいな時期だったので、花が開ききる前のいい形の時を狙って撮影した。

カタクリで吸蜜するギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日
カタクリで吸蜜するギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日

 撮影している時はきれいな個体がほとんどかと思っていたが、家に帰って写真を確認すると細かいスレのある個体も意外に多かった。山の高いところのギフチョウは低地で発生して上ってきた個体が混じるため、見られる鮮度の幅が広くなるのは仕方がないところ。そのために撮影前の個体の見極めが大切になる。
 カタクリの花は開ききっていても、下の写真くらいに花びらがまとまっていれば雰囲気は悪くない。

カタクリで吸蜜するギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日
カタクリで吸蜜するギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日

 紀伊半島のギフチョウによく見られる後翅外縁の橙色斑が内側に跳ね上がった個体も撮影することができた。

カタクリで吸蜜するギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日
カタクリで吸蜜するギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日

 すでに♀も少ないながら見られたが、花が暴れているし蝶もあまりいいポーズを取ってはくれなかった。

カタクリで吸蜜するギフチョウ♀ 奈良県御所市 2019年4月20日
カタクリで吸蜜するギフチョウ♀ 奈良県御所市 2019年4月20日

 この辺りの食草はミヤコアオイですでに芽吹いている。若葉のうちは可愛いが、十分に展開すると何となく葉の模様が毒々しい感じであまり美味しそうではない。でもスズカカンアオイよりはやわらかそう。


 食草のミヤコアオイ

 一通りの吸蜜写真を撮影したので、飛翔用のカメラに持ち替えた。

飛翔するギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日
飛翔するギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日

飛翔するギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日
飛翔するギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日

紀伊半島産のこの辺りのギフチョウの変異の大まかな傾向は、前翅中室の黄色い部分がリング状になる傾向がある。後翅中室の黒斑が太く、そしてくびれる。その黒斑の外側の黒い短条がねじれる。そして後翅外縁の橙色斑が内側にはねることなどがある。
生態写真では前翅はともかく後翅の特徴までがはっきり見える姿では撮影しにくいのだが、下のような飛翔写真だとこれらの特徴をつかみやすい。この個体は前記の各特徴が良く現れた個体だと思う。

飛翔するギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日
飛翔するギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日

 カメラを構えて吸蜜中の蝶を撮影しようとしていると、周りを飛んでいる別の個体にちょっかいをかけられるような場面にも何回か遭遇した。

飛翔するギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日
ギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日

 午後になって日差しの方向が変わると、カタクリの花弁が透過光で明るく光るようになった。でも蝶の姿は陰になるのでフラッシュを強めに光らせて撮影した。ギフチョウの鮮度が今ひとつだが、カタクリの花の形は良いので気に入っている。

カタクリで吸蜜するギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日
カタクリで吸蜜するギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日

 最後に背景写真を。といってもカタクリの背景はこのようなヤブで見通しが利かない雑木林が続いており、こういう所からギフチョウが飛んでくる。

カタクリで吸蜜するギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日
カタクリで吸蜜するギフチョウ♂ 奈良県御所市 2019年4月20日

紀伊半島に限らずどこともギフチョウは少なくなっているが、この山では今でも確実にその姿を見ることができる。これはもちろん採集などが禁止されて保護されている成果だろう。そしてこの地方の特徴を有した個体群が健在でいることは、さらに喜ばしいことである。

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