2022年7月7〜9日 長野県生坂村 キマダラモドキ

 長野県で撮影した7月7〜9日の三日間の午後はキマダラモドキの撮影に注力した。ここは昨年はじめて連れて行ってもらったのだが、すでに時期が遅かったのでスレ、ボロ個体のみの撮影しかできず、今シーズンの再訪を楽しみにしていた。

 ポイントはどこにでもあるような雑木林で杉の木が混じる山道である。



 探し始めてすぐに立ち木の幹に静止する個体を観ることができた。すでに6月末から発生しているので、とびきり新鮮というわけではない。

静止するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月9日
静止するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月9日

静止するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月7日
静止するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月7日

 ひととおり静止を撮影したあとは、飛翔姿を狙った。蝶が飛ぶ空間は樹林の陰になり、光量が足りないのでLEDの補助光を使ってみた。

飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月7日
飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月7日

飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月8日
飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月8日

 この蝶の探雌飛翔は、樹幹に沿ってぐるぐる回りながら上下するような飛び方である。

飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月7日
飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月7日

 不活発な個体が多い中でも探雌飛翔をしているような感じで飛ぶ個体もいるのだが、出会った相手がイマイチで卍飛翔には発展しないという場合が多かった。まだ性的に成熟していないということだろうか。2020年に岐阜県郡上市で撮影した時も、発生初期の個体間では全く卍飛翔は見られなかったのでそういうものかもしれない。

飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月8日
飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月8日

 同じ撮影アングルばかりでは面白くないので、樹幹に沿って飛んでいるところを下から見上げて撮影してみた。

飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月8日
飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月8日

 すでに活動時刻に入っているはずなのだが、仲良く3頭が吸汁している様子も見られた。「仲良きことは美しき哉」などという言葉も頭に浮かんでくるが、もっとお互いに敵愾心を出して争ってくれればいいのにと思ってしまう。

吸汁するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月9日
吸汁するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月9日

  こうして三日間、数頭のキマダラモドキが集まっているこのポイントで粘ったのだが、なかなか卍飛翔を観ることができなかった。たいていの場合は♂同志が出会っても、下のように一方的に相手を駆逐するだけだった。

飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月7日
飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月7日

 時には三つ巴で飛ぶこともあった。賑やかで画としては面白いのだが、これは私が期待していたような卍飛翔ではない。

飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月8日
飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月8日

 結局、期待していた卍飛翔らしいのは2回だけで、それも数秒間しか持続しなかった。

飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月8日
卍飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月8日

 卍飛翔を見せてくれたのがきれいな個体で良かった。

飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月9日
卍飛翔するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月9日

 動きが少ない蝶なので樹幹に静止すると裏面ばかりを撮影することになるが、歩いているときに翅を少し開くところを撮影できた。

静止するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月7日
静止するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月7日

 本種の開翅は、岐阜県郡上市で朝早い時刻と夕刻に撮影したことがある。この日も、夕刻の樹幹に光が射したときに90度くらいだが、翅を開く個体を撮影することができた。

静止するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月9日
静止するキマダラモドキ♂ 長野県生坂村 2022年7月9日

 午後5時頃、数メートルの高さの葉裏で静止する個体を撮影できた。見た感じは♀であり、もうこの日の活動は終了といったところ。

静止するキマダラモドキ♀ 長野県生坂村 2022年7月7日
静止するキマダラモドキ♀ 長野県生坂村 2022年7月7日

 この場所で三日間撮影したのは、この蝶の卍飛翔を撮影したかったためである。この蝶の♂同志の卍飛翔を初めて見たのは、20年近く前の2003年の岐阜県高鷲村で郡上市と合併する前年のことでだった。薄暗い林内でなめらかに、そして静かに高速で回転する二個体の卍飛翔が数分間にわたって続いていたのが印象に残っている。その後、何度もチャレンジしているのだが、再度の撮影はできていなかった。今回は短時間の卍飛翔の撮影には成功したものの、その持続時間の点でちょっと不満が残り、次回の撮影への課題が残ることになった。こういうすばらしい場所の情報を提供してくれた撮影仲間に感謝したい。

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