2022年8月 滋賀県 ミヤマカラスアゲハ

 これまで夏型のミヤマカラスアゲハを主に狙ったことはなく、ほかの撮影行の副産物として吸水や、吸蜜を撮ることがある程度だった。やはり夏型よりは春型の方が美しいという思いがあるのも夏型を狙わなかった理由の一つ。そのようななか、8月に咲くクサギの花に集まるミヤマカラスアゲハの情報をいただき、出かけることにした。

 すでにクサギは満開で周辺には甘い香りが漂っている。クサギ(臭木)といっても、花はいい香りだ。



 飛来するミヤマカラスアゲハはそれほど多くはなかったが、この花で吸蜜する姿を撮影することができた。羽化してそれほど間がないような新鮮な個体から、翅がほとんどないような大破というべき個体までいろいろな状態の個体がいるので、だらだらと発生しているのだろう。

 改めて撮影してみると夏型でも翅表の青帯が発達しているものもおり、個体差はあるがなかなかきれいなものである。
 
吸蜜するミヤマカラスアゲハ♂ 滋賀県 2022年8月16日
吸蜜するミヤマカラスアゲハ♂ 滋賀県 2022年8月16日

 後翅裏面の白帯は消失する個体も多いのだが、この個体はかなり発達している方だ。翅表の青帯の発達とある程度は連動しているように感じる。

吸蜜するミヤマカラスアゲハ♂ 滋賀県 2022年8月16日
吸蜜するミヤマカラスアゲハ♂ 滋賀県 2022年8月16日

 夏のミヤマカラスアゲハなんて、うすらでかいだけでたいしたことは無いと思っていたが、少し認識を改めた。

吸蜜するミヤマカラスアゲハ♂ 滋賀県 2022年8月16日
吸蜜するミヤマカラスアゲハ♂ 滋賀県 2022年8月16日

 といってもやはりカラスアゲハとあまり変わらないようなレベルの個体もいるのは間違いない。

吸蜜するミヤマカラスアゲハ♂ 滋賀県 2022年8月15日
吸蜜するミヤマカラスアゲハ♂ 滋賀県 2022年8月15日

 こういう個体は後翅の白帯もほとんど消えかかっているので、裏面もカラスアゲハ的だ。

吸蜜するミヤマカラスアゲハ♂ 滋賀県 2022年8月15日
吸蜜するミヤマカラスアゲハ♂ 滋賀県 2022年8月15日

 ♀も少し観ることができたが、写せた個体の鮮度はそれほど良くなかった。

吸蜜するミヤマカラスアゲハ♀ 滋賀県 2022年8月14日
吸蜜するミヤマカラスアゲハ♀ 滋賀県 2022年8月14日

 後翅の青帯が発達したきれいな個体も見たのだが、あまりうまく写せなかった。

吸蜜するミヤマカラスアゲハ♀ 滋賀県 2022年8月14日
吸蜜するミヤマカラスアゲハ♀ 滋賀県 2022年8月14日

 クサギの花には時々♂が巡回してくるので、♀は落ち着いて蜜を吸ってはいられない。見つかるとすぐに♂に追い立てられることになる。

飛翔するミヤマカラスアゲハ♀ 滋賀県 2022年8月14日
飛翔するミヤマカラスアゲハ♀ 滋賀県 2022年8月14日

 下の♀は新鮮なのだが、美しさの点ではカラスアゲハとほとんど変わらない。

吸蜜するミヤマカラスアゲハ♀ 滋賀県 2022年8月22日
吸蜜するミヤマカラスアゲハ♀ 滋賀県 2022年8月22日

 後翅裏面の白帯はほとんど消失していたので、しばらくはカラスアゲハかと思っていたほどだった。

吸蜜するミヤマカラスアゲハ♀ 滋賀県 2022年8月22日
吸蜜するミヤマカラスアゲハ♀ 滋賀県 2022年8月22日

 盛夏のミヤマカラスアゲハの美しさは巾はあるものの、ここまでは想定内の範囲だった。ところが昼過ぎに飛来した一頭の♂をみてビックリ。翅表の青帯が太くまるで春型のような個体だった。春型のミヤマカラスが真夏に咲くクサギに訪れているというようなちょっとおもしろい画になった。

吸蜜するミヤマカラスアゲハ♂ 滋賀県 2022年8月14日
吸蜜するミヤマカラスアゲハ♂ 滋賀県 2022年8月14日

 夏の個体もかなり変異に巾があるようだが、さすがに翅表にこれほど幅広い青帯がある個体は見られない。

吸蜜するミヤマカラスアゲハ♂ 滋賀県 2022年8月14日
吸蜜するミヤマカラスアゲハ♂ 滋賀県 2022年8月14日

 後翅裏面の白帯も太く幅広い。おまけに写真ではわかりにくいが、この個体は少し小型で、まさに春型そのものだった。

吸蜜するミヤマカラスアゲハ♂ 滋賀県 2022年8月14日
吸蜜するミヤマカラスアゲハ♂ 滋賀県 2022年8月14日

 真夏に春型的な個体が見られることは、どれくらいあるのだろうか。文献によると三重県伊勢市産の春型♀から飼育した個体群が、6月に夏型として羽化したグループと8月中旬〜9月中旬にかけて春型タイプとして羽化したグループに分かれた例が報告されている。また別の資料では24時間暗黒下で飼育すると、すぐには羽化せず春型的な個体を生じるということらしい。今回の個体もそのような日照不足の環境で生育した個体が今頃に羽化したということだろうか。

 こうして8月の暑いさなかの谷間でミヤマカラスアゲハを撮影した。私のこの蝶に対する理解が足りないだけだろうけど、真夏でも春型的な個体、また春と夏との中間的な個体が見られることを知ったことが興味深かった。

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