アルタイヒメヒョウモン

                 Boloria altaica    

 高地性の蝶の撮影を楽しみにしていたフブスグル湖周辺での撮影は、初日は晴れ間があったもののその後はずっと曇り〜雨となり、気温も10℃そこそこの日が続いた。そういう蝶が飛ばないような厳しい日でも、個体数が多いせいか比較的大きなヒョウモンの仲間は草の上にその姿を探し出すことができた。そこで、そういう姿を見つけてはいろいろな手を尽くして翅を開かせるという撮影スタイルになった。蝶としては厳しい気候にじっと耐えている時に、さぞ迷惑だっただろうと思う。

 アルタイヒメヒョウモンはフブスグルの周辺の草地で最も多く姿を見られたヒョウモンである。ちょうど新鮮な個体が多く、撮影適期だった。

 最初の写真は薄紫色のキクのような花で開翅する♂。胴体から翅の基部にかけて密生した毛が北方系の蝶であることを示している。

アルタイヒメヒョウモン♂ モンゴル フブスグル
      アルタイヒメヒョウモン♂ 開翅 フブスグル 2017年7月4日

 ♀は変異が多く、下のような褐色が強いのものから殆ど黒化したものまでいろいろ見られた。

アルタイヒメヒョウモン♀ モンゴル フブスグル
  アルタイヒメヒョウモン♀ 開翅 フブスグル 2017年7月4日

 寒い時には下のように前翅を後翅の間にすっかりたたんでいる姿となる。

アルタイヒメヒョウモン♂ モンゴル フブスグル
       アルタイヒメヒョウモン♂ 静止 フブスグル 2017年7月3日

 下は♀の裏面。♀の方が体の毛の密生状態が薄いように思うがなぜだろうか。

アルタイヒメヒョウモン♀ モンゴル フブスグル
        アルタイヒメヒョウモン♀ 静止 フブスグル 2017年7月4日

 暖かくなると花で吸蜜する個体を見かけるようになる。

アルタイヒメヒョウモン♂ モンゴル フブスグル
   アルタイヒメヒョウモン♂ 吸蜜 フブスグル 2017年7月4日
 
 早朝、全身に朝露をびっしりとつけた姿。胴体にびっしりと生えた毛は、水滴を体から遠ざける効果があるようだ。高地性の蝶はこのようにしないと体や翅が濡れてしまい飛べなくなってしまうのだろう。

アルタイヒメヒョウモン♂ モンゴル フブスグル
        アルタイヒメヒョウモン♂ 静止 フブスグル 2017年7月3日

 他の種のところでも書いたが、2017年のモンゴルは季節の進みが早かった。下の写真は日本の夏の高山を彩るチングルマかオキナグサに近い種類の花の枯れたものだと思うが、まだ7月2日であるのにすでにこのような状態。この地ではもう夏も終わりということだろうか。

アルタイヒメヒョウモン♀ モンゴル フブスグル
    アルタイヒメヒョウモン♀ 開翅 フブスグル 2017年7月2日

 下は交尾個体。


    アルタイヒメヒョウモン交尾 上;♀、下;♂ フブスグル 2017年7月2日

 この蝶がいた草原や山々を背景に広角で一枚。

アルタイヒメヒョウモン♂ モンゴル フブスグル
      アルタイヒメヒョウモン♂ 静止 フブスグル 2017年7月2日

 蝶が活動できないような雨や低温などの悪条件には苦労したが、撮影のための光の条件としては悪くはなかった。それは日本でも同じことだが、カンカン照りの晴れ間よりも薄い曇りか雨が降りそうな条件の方が蝶をしっとりと写せる。

 そういう意味では雨の日も悪くはない。

アルタイヒメヒョウモン♀ モンゴル フブスグル
  アルタイヒメヒョウモン♀ 静止 フブスグル 2017年7月3日

 ただし飛翔写真の場合は、晴れるかある程度気温が高くならないと撮影機会そのものに巡り会わない。下は数少ないチャンスに撮影した飛翔写真。

アルタイヒメヒョウモン♂ モンゴル フブスグル
        アルタイヒメヒョウモン♂ 飛翔 フブスグル 2017年7月2日

アルタイヒメヒョウモン♀ モンゴル フブスグル
        アルタイヒメヒョウモン♀ 飛翔 フブスグル 2017年7月2日

アルタイヒメヒョウモン♀ モンゴル フブスグル
          アルタイヒメヒョウモン♀ 飛翔 フブスグル 2017年7月3日

 本種と同じBoloria属にはヒメヒョウモン(アキロヒメヒョウモン)というのもいるが、なかなか同定は難しい。


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