例年撮影に出かけている雑木林でミヤマセセリをちょっと気合いを入れて撮影した。ギフチョウと時期がだぶるので、いつもついでの撮影対象であり、あまり気に入った写真が撮れていなかった。
朝のうちは少し流れてくる雲があったが、9時をすぎる頃から空いっぱいに青空が広がりて強い日差しが照りつけ、絶好の撮影日和となった。日中はせわしなく飛び回るこの蝶も、朝早いうちはいくぶん緩やかに飛んでくれるので撮影のチャンスは大きい。
最初に飛び出したのは♂。
雑木林の中を飛ぶミヤマセセリ♂ 三重県菰野町 2009年4月12日
足場はよい疎林であるが、けっこう敏感でなかなか接近させてくれない。これは♀。
雑木林の中を飛ぶミヤマセセリ♀ 三重県菰野町 2009年4月12日
ちょうど満開の桜があったので、背景にするべくいろいろな角度での撮影を試みた。春の蝶と春の花の組み合わせだが、この蝶の場合は、あまり華やかな花は似合わないかもしれない。
サクラの花を背景にしたミヤマセセリ♀の飛翔 三重県菰野町 2009年4月12日
地面近くを低く飛ぶ♀。このあと産卵行動をとったので、意外に小さなコナラの木に産卵するということを知った。
産卵に適した木を探して飛翔するミヤマセセリ♀ 三重県菰野町 2009年4月12日
動きのある翅の二段しなりが写し込めて満足。
ミヤマセセリ♀の飛翔 三重県菰野町 2009年4月12日
求愛行動をするミヤマセセリの♂♀ 三重県菰野町 2009年4月12日
ちょうど鮮度もよく、撮影には最適だった。
ミヤマセセリ♂の飛翔 三重県菰野町 2009年4月12日
山道を飛ぶミヤマセセリ♀ 三重県菰野町 2009年4月12日
ギフチョウがベストシーズンの絶好の好天なのに、このような地味な蝶を追い求めて汗をかいていたが、ギフチョウを忘れていたわけではない。この雑木林はかつてはギフチョウのポイントだった。 三重県のギフチョウは現在では奈良県との近くの名張市付近に少数が棲息するだけになり、伊勢湾に沿った鈴鹿山地からは全く姿を消してしまっている。とはいえ私が大阪から三重に移り住んだ約20年前はこの辺りでも採集記録が報告されていた。しかし当時から個体は少なく、私が唯一成虫を採集できたのが1993年の1♂のみだった。このミヤマセセリが遊ぶ雑木林では卵が採集できたが、見たところそのころと環境はほとんど変わっていない。相変わらず不味そうではあるがスズカカンアオイはたくさん茂っている。周りは別荘地が作られたので多少は雑木林も切り開かれているが、それによって失われた面積はわずかなものだと思う。また有名産地とは異なり、採集圧もほとんどなさそうである。だからギフチョウがいなくなったということが未だに信じがたいというのが正直な気持ちなのだ。本当に姿を消してしまったのだろうか?
そしてそれを確認するため、ベストシーズンのベストの条件の時を選んで訪れてみた。
かって1♂を採集したピークに10時半〜11時過ぎまで滞在してみたが、色褪せたヒオドシチョウが飛んできただけで、ギフチョウの姿は無かった。やはりもういなくなったということだろうか。
〈戻る〉
|