2017年6月16日 奈良県川上村 ホシミスジ |
最近ホシミスジの解説本が出版された。これによると日本産は10亜種くらいに分類されるらしい。この本を入手して勉強しようと言うほどの根性は無いのだが、この本の著者の一人が2010年に某昆虫誌に中間報告として出されたものが手許にあるので、これを改めて読み返してみた。その頃の知見としては奈良県から三重県にかけての紀伊半島山地に産するものは石灰岩の岩場に残存している個体群であるそうである。そしてまれな種とされている。奈良県川上村の岩場に棲むホシミスジならば私も以前に撮影したことがあり、見ることができそうな場所は把握しているので撮影に出かけた。
息を切らしてたどり着いたのはこのような急峻な岩場で、不安定な岩がごろごろしている。 ここは5年ぶりくらいに訪れたのだが、以前とはちょっと風景が変わっており、青い葉が少なくなり枯れた木の枝が多数ころがっていた。 ![]() ホシミスジが棲息する急峻な岩場 奈良県川上村 2017年6月16日 下は2010年撮影の岩場で、少し違う場所だが今年のように枯れた木は目につかず、岩の隙間にも青々とした葉が茂っている。この岩場の木はシモツケ科のイワガサが主でここでホシミスジが食樹としている木である。 ![]() 食樹が繁る以前の岩場 奈良県川上村 2010年6月16日 近づいてみると枯れた主幹の根元には少しだけ葉がついており、すっかり枯れてしまった訳では無いようだ。岩場の急峻なところまでは枯れていなかったので、おそらく鹿による食害だと推定するが無残な状態である。これはどうだろうか、ちょっと落胆しながらも気を取りなおして撮影準備を始めた。 ![]() 主幹が枯れてしまったイワガサ 奈良県川上村 2017年6月16日 カメラを準備したところで不意に目の前数メートルのところにベニモンカラスシジミが現れた。もともとこの岩場は数年前にベニモンカラスの撮影場所を探してたどり着いた場所であるのでベニモンがいても不思議では無い。むしろ初めてカメラに収めることができた当地のベニモンカラスだった。体を倒したのでうまく写せなかったのが残念だったが、まだ新鮮そうな♂である。 ![]() 飛来したベニモンカラスシジミ♂ 奈良県川上村 2017年6月16日 枯れ枝が転がった殺風景な岩場を見張っていると、以前と同じように時々ホシミスジが飛んでくる。飛んできたのは2時間ほどで4〜5回なので多くは無い。個体数もおそらく2♂1♀くらいだろう。♂の場合は緩やかに飛翔しても巡回中なのか止まることはなかった。 さいわいこの個体は♀で岩場にしばらく静止した。 ![]() 開翅するホシミスジ♀ 奈良県川上村 2017年6月16日 飛ぶところも一枚だけ撮影できた。実はこの日のホシミスジでまともに撮影できたのはこれだけ。次の予定があったので少し早かったが13時頃には引き上げることにした。 ![]() 飛翔するホシミスジ♀ 奈良県川上村 2017年6月16日 これだけでお終いにするのではあまりに寂しいので、この機会に以前に撮影したこの辺りのホシミスジの♂個体を紹介する。後翅亜外縁の白斑列は消えそうになっているのが目につく。こういうふうに黒くなるのが各地の山地などに依存している個体群の特徴のようである。 ![]() ウツギで吸蜜するホシミスジ♂ 奈良県川上村 2012年6月14日 さらにはこれも岩場でベニモンカラスシジミを待っている時に、傍らのイワガサの枝先で見付けた蛹。残念ながら寄生されておりすでに死蛹だったが、これで食樹をはっきりと認識した。 ![]() 食樹に下垂するホシミスジ蛹(死蛹) 奈良県川上村 2011年6月3日 この辺りの山地性ホシミスジの発生回数は先の報告によると年一化(6月〜8月)とされているが、平地との発生期のずれはそれほど大きくは無いので、もう一回くらいは発生していても良さそうな気もする。もっとも最近の解説本を読んでいないのでこの辺りにもすでに回答が載っているのかも知れない。また来シーズンに再チャレンジである。
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