2017年8月下旬 三重県熊野市 ルーミスシジミ |
これまでルーミスシジミの撮影シーズンは秋になってから地上付近に降りてくる個体の開翅を狙うというのが仲間うちでの定番だった。しかしその頃のルーミスは羽化してから3〜4ヶ月経過していることもあり本当にきれいな個体は少ない。キズが少ない個体を撮るにはやはりまだ暑い夏のうちに撮影しなければならない。ルーミスは真夏の暑い日には谷底の涼しい場所で避暑をしていることはよく知られており、私も何度も採集や撮影に出かけたことはある。でもそんな不活発な蝶の飛翔はどうすれば撮影できるのかと思いながら、まずどの様な状況か様子を見に行ってみることにした。その結果、試行錯誤を繰り返しながら4日間も通うことになってしまった。
三重県のルーミスシジミの産地の谷のひとつ。こんな大きな岩がごろごろある様なところに入ってみた。 撮影場所を決めるために下見をするべく早めに到着したが、午前9時を過ぎるとチラチラと飛んできて低木の葉先に止まる姿を見付けることができた。もっと昼の暑い頃にならないとダメなのかと思っていたが、予想外に早い時刻から降りてくるものだ。 葉上に静止するルーミスシジミ 三重県熊野市 2017年8月下旬 ルーミスは低木の葉先でしばらく休んでいたが、さらに気温が高くなったせいか次第に谷底の岩にまで降りてくるようになった。 岩壁に静止するルーミスシジミ 三重県熊野市 2017年8月下旬 こういった岩場に止まった個体はきわめて敏感で、人が接近するとすぐに反応して飛び立ってしまう。ということはこういった驚いて飛びたった個体を見つけては追いすがるようにして接近すると飛翔写真を撮影することができることがわかった。もちろん岩に止まっている蝶をめざとく見つければもっと良いのだが、そんなことは神わざに近い。低木の葉上に止まっている個体はもう少し見つけやすいが、少し高いので手が届かない。 谷の岩の上を飛翔するルーミスシジミ 三重県熊野市 2017年8月下旬 秋にカシなどの樹上を飛んでいるルーミスを見ていると、緩やかにチラチラと飛ぶので飛翔写真はそれほど難しくはないと考えていた。しかし夏ルーミスの撮影は実際は格段に難しい。理由は木漏れ日の中を不規則にチラチラと飛ぶのでフラッシュ効果と呼ぶのだろうか、目視で蝶の姿を捉え続けにくいことが第一。次にあまりに環境が薄暗くフラッシュなどの補助光源が必要で、撮影機材の機動性が著しく落ちること。また薄暗いため被写界深度が深い広角レンズは使いにくく、明るいレンズによる撮影となるので、蝶にピントが合わない。それから最初に示した写真のようなごろごろした岩場なので、足下が著しく悪いことなどが挙げられる。 それでも4日間歩き回って撮影した写真を何枚かご紹介したい。 飛翔するルーミスシジミ 三重県熊野市 2017年8月下旬 やはりこの時期のルーミスは、翅表のキズやスクラッチが少ないことがわかる。 飛翔するルーミスシジミ 三重県熊野市 2017年8月下旬 今回の撮影には少し光が弱いがLEDで自作した補助光源を使った。これはストロボで連写に追従させるためにはキヤノンでは一番大きい(重い)機種を外部バッテリー付きで動かす必要があり著しく機動性に欠けると判断したためである。 飛翔するルーミスシジミ 三重県熊野市 2017年8月下旬 小さな滝の水しぶきを背景に飛ぶルーミス。いかにも夏らしい雰囲気に撮れた。 飛翔するルーミスシジミ 三重県熊野市 2017年8月下旬 低木の葉上を飛ぶルーミス。 飛び立ち写真ではなくて着陸写真。 飛翔するルーミスシジミ 三重県熊野市 2017年8月下旬 低木や岩に止まっている時のルーミスは通常はきわめて敏感なのだが、時々非常に鈍感な時があり、枝葉を揺らせてもカメラをほんの数センチまで接近しても反応しないことがある。居眠りでもしているのだろうかと思ってしまう。 こういう林床の低いシダの葉上に止まっている姿をよく見る。これも接近して広角で撮影できた。 シダに静止するルーミスシジミ 三重県熊野市 2017年8月下旬 やはりマクロでしっとりとした姿を写しておきたい。今回の静止画の撮影ではフラッシュは殆ど使わなかった。 静止するルーミスシジミ 三重県熊野市 2017年8月下旬 もう撮影を終えようとした時に見かけた個体。これも広角で接近して撮影することができた。 静止するルーミスシジミ 三重県熊野市 2017年8月下旬 写真の質としてはまだまだ不十分なのだが、夏のルーミスの生態をだいぶん理解することができたので次のターゲットに移ろうと思う。また機材の改良や作戦を練り直して来シーズンに再挑戦したい。 〈戻る〉
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