2019年3月19〜26日 鹿児島県 奄美大島 イワカワシジミ
           

 これまで沖縄には何度も出かけているのだが、裏面がグリーンの新鮮なイワカワシジミには巡り会ったことがなかった。しかし撮影仲間から昨春の奄美大島でのイワカワシジミのテリ張りの情報を詳しくいただき、この春に出かけるのを楽しみにしていた。

実際に歩いてみると奄美大島は至る所にクチナシが自生している。この枝先にはすでに蕾も見えているので第一化はこれに産卵するのだろう。


イワカワシジミの食草のクチナシ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日

 訪れた宇検村でのカラスアゲハは期待していたより少なく、これ以上の成果が見込めなくなったので、予定より一日早い3月21日にイワカワシジミのポイントヘ向かった。ところがテリを張る見込みの時刻になっても、ポイントにイワカワシジミの姿はなかった。カラスアゲハの成果ももう一つだったし、イワカワシジミもこの状態では今回の旅行は厳しいものになってしまう。

 多少気落ちしながらも、この付近にイワカワシジミがいるのは確かなはずと思い直して、あちこちの林道や草原を歩いて探してみた。しばらく歩きつづけて少し疲れたので腰を下ろして休んでいると、目の前の樹上を追尾する2頭の蝶の姿が見えた。そして、ここから夢のような時間が始まった。

イワカワシジミの追尾飛翔 奄美大島 奄美市 2019年3月21日
 イワカワシジミの追尾飛翔 奄美大島 奄美市 2019年3月21日

 空をバックに飛ぶ黒い影の正体ははじめはわからなかったが、次第に低いところへも降りてくるようになった。そして何となくその色調からイワカワかも?と思うようになったが、止まることはなかったので確証が持てなかった。そこでカメラの連写で姿を写しとめてみたところ、ぼんやりと裏面のグリーンが写っており、イワカワと確認できた。下がこの時の実際の写真である。左上にぼんやりと写っているのがイワカワシジミ。ついにイワカワシジミのテリ張り場所を見つけたぞ!

飛翔するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日
 飛翔するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日

 しばらく続いた追尾飛翔のあとようやく片方を追い払ったのか、一頭が目の前の枝先2mくらいの高さの所に静止した。そしてすぐに開翅。初めて見るイワカワシジミの開翅だった。

開翅するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日
開翅するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日

 イワカワシジミは一度止まると、それほど頻繁には飛び立たない。それでも飛び立つ度に次第に低いところに止まるようになり、ついには目線と同じくらいにまで降りてきた。改めて見ると下のような色調の葉に止まると、保護色になって見つけにくい。

開翅するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日
開翅するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日

 さらには100oマクロでも充分な位置にまで降りてくるようになった。

半開翅するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日
半開翅するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日

 そしてついに最高の場所で全開してくれた。バードアタックを受けたのか肛角が欠けた個体だったのが残念だったが、奄美の春型の白斑が現れた新鮮な個体だった。

開翅するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日
開翅するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日

 静止時間は長いが時々は占有範囲を飛びまわるので、この時に飛翔を撮影した。観察している間にこの個体が明らかにスクランブル発進したのは、別のイワカワシジミに対してが一回、傍らを飛んだモンキアゲハに対してが二回だった。

飛翔するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日
飛翔するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日


飛翔するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日
飛翔するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日


飛翔するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日
飛翔するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日

飛翔するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日
飛翔するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日

 ある程度の写真が確保できたので、だんだんと余裕ができて下のような広角による姿にもチャレンジするようになった。

静止するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日
静止するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日


開翅するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日
開翅するイワカワシジミ♂ 奄美大島 奄美市 2019年3月21日

この日に見たイワカワシジミは最大で3頭だった。しかしこの場所は本当に安定したテリ張り場所なのだろうか? 翌22日は、あいにくの寒波の影響で午前中に2時間程度の青空がのぞいたものの、昼を過ぎると真っ黒な雲と冷たい北風が吹くという南の島とは思えない天候になった。それでも一応はポイントで待機したが、蝶の姿は無かった。その次の日も同じ様な天気で小雨までパラついたのでダメ。24日は午前中の晴れ間が昼すぎまで続き、テリ張り場所の近くのシロノセンダングサで吸蜜する♀を撮影することができた。このまま晴れ間が続けば・・・・、と期待したが、やはり次第に雲が広がり冷たい風が吹きはじめ終了となった。そして翌25日は昼前から雨。ついに26日は申し分のない好天になったが、残念ながら昼の便で島を離れなければならなかった。

吸蜜するイワカワシジミ♀ 奄美大島 奄美市 2019年3月24日
センダングサで吸蜜するイワカワシジミ♀ 奄美大島 奄美市 2019年3月24日

イワカワシジミのテリ張り行動を観察できたことは非常な幸運だったと思う。実はこの蝶のテリ張りの具体例については、私は奄美の昨年の例と2015年の沖縄本島の例しか聞いたことがない。そして聞いていた奄美では今年は確認できず、沖縄本島でもその年の秋には激しい追尾が観察されたもののそれ以降は確認されていないようだ。理由はわからないが大変気むずかしい蝶のようだ。

(たくさんの写真を掲載したが、撮影したのは♂♀各一頭である。)


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