2019年5月7〜14日 北海道 スギタニルリシジミなど
北海道での撮影目標の一つにスギタニルリシジミがあった。ここ数年はこの蝶に興味を持ちあちこちで撮影を続けているのだが、北海道産は別亜種に扱われており、地味な蝶なのだがこれを外すわけにはいかない。
北海道での分布は広いようなのでチャマダラセセリなどを撮影している時にも見た青いシジミはよく確認するようにしていたが、いずれも下のように明らかなルリシジミでスギタニルリシジミと見られる個体はいなかった。 ![]() 吸水をするルリシジミ♂ 北海道 音更町 2019年5月10日 翅表の明るいブルーは三重あたりにいるものと変わらない。 ![]() 飛翔するルリシジミ♂ 北海道 音更町 2019年5月10日 ところが旭川から十勝に移動して二日目の夜に、これまで撮影した写真をチェックしていたところ、下の一枚のルリシジミが目にとまった。これは十勝に来てというより北海道に来て最初に見て撮影した蝶なのだが、この時は目の前の崖にジョウザンシジミがいるかどうかが気になって、よく確認せずにそのままだった。みると肛角付近の黒斑の融合具合はスギタニのようだが、あまりに裏面地色が白い。でも北海道産は裏面の地色は白いというし、なによりここはスギタニがいるポイントということを聞いている。 ![]() ルリシジミ? 北海道 中札内村 2019年5月9日 この個体がスギタニルリかどうかはよくわからなかったが、この付近にも生息しているのは確実なので、迷ったあげく翌々日の午前中はスギタニルリにチャレンジすることにした。撮影した個体がかなりスレているので、もう少し季節をさかのぼる方がいいだろうということで、同じ川沿いの上流で少し標高を上げた林道に狙いをつけた。 探したのはいかにもスギタニルリが飛んでいそうなこのような河原。 ![]() 北海道 中札内村 2019年5月12日 あるいは下のような小さな流れのある谷間。こういう所にトラップを仕掛けたりして、巡回しながら確認をした。無風快晴で暖かい日だったが、飛んでいるのはスジグロシロ、ルリシジミ、コツバメと越冬タテハばかり。残念ながらスギタニルリを見ることはできなかった。 ![]() 北海道 中札内村 2019年5月12日 最高の条件の日の半日を費やしたスギタニチャレンジは敗北に終わり、仕方なく残り物のジョウザンシジミでも拾おうかと、くだんの個体を撮影した崖のポイントまで戻ってきた。するとどうだろうか林道に沿った丈が1mくらいのイタドリの群落上を素速く飛びまわっている青いシジミが見える。しかも何頭かが飛んでおり、中には卍飛翔をするものもいる。スギタニルリのこのような占有行動はあちこちで見ている。やはり、ここにいたのか・・・。なかなか近くには止まらなかったのでレンズを300mmに付け替えて撮影した。裏面がよく見えなかったが、このくすんだ翅の表はスギタニルリに違いない。 ![]() 北海道 中札内村 2019年5月12日 すると突然別の個体が飛来してしばらくの卍飛翔の後、二匹ともイタドリの葉に止まり、即座に交尾が成立した。そして一部始終をカメラに収めることができた。 ![]() 北海道 中札内村 2019年5月12日 ![]() 北海道 中札内村 2019年5月12日 スギタニルリのポイントを見つけた上に、求愛と交尾まで撮影できた! 午前中の苦戦からするとこれは大逆転や! 交尾個体を撮影するためにカメラを静止撮影用のマクロレンズに替えた。そしてファインダーをのぞくと、「なんや、ルリシジミか・・」。よく見ると♀は明らかにただのルリシジミだった。こうしてこの日のスギタニチャレンジは完全に失敗に終わった。 ![]() 北海道 中札内村 2019年5月12日 ![]() 北海道 中札内村 2019年5月12日 それではスギタニルリは撮影できなかったのかというとそうではない。最終日にエゾノリュウキンカでのエゾヒメギフチョウの撮影が一段落した後、近くの林道でようやく一頭のスギタニルリシジミの♂を見つけて裏面だけだが撮影することができた。きわめて新鮮な個体であり、飛んでいる時の翅表の色調は本州産のものとそれほど変わらない深いブルーだったが、これを写せなかったのが残念だった。 ![]() 地面に静止するスギタニルリシジミ♂ 北海道 上川町 2019年5月14日 十勝に来てから最も天気がよい午前中をスギタニルリの探索に費やして、何も成果は得られなかった。チャマダラセセリの撮影や探索には最適な日で、そちらを選択しておけばおそらくそれなりに成果が得られたようにも思うが、不思議に残念という気持ちはなかった。 聞くところによると今年の春の北海道は4月に入ってからの寒波の影響か蝶の姿は少なく、帯広のジョウザンシジミは平年並みだったものの、それ以外は相当な不作だったようだ。たしかに天候には恵まれなかったせいもあるが、蝶の個体数は少なく、飛んでくるのをじっと待つという撮影が多かった。とりあえずは目標の種類は撮影できたのだが、内容はまだまだ不十分なことが多いので、再度機会を作って撮影に訪れたいと思う。一連の北海道の撮影記録はこれでお終い。 〈戻る〉
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