2020年8月16日 三重県紀宝町 ルーミスシジミ

 今年、2〜3回出かけたところ紀伊半島のルーミスシジミが豊作であるという印象をうけた。こういう年にはこれまで撮影したことが無いポイントを探索がてら歩いてみるのもいいのだろう。三重県内でルーミスシジミが記録されているのは、伊勢市などの古い記録を除くと近年は県南部の4市町(熊野市、尾鷲市、紀宝町、御浜町)であり、私がこれまで撮影しているのは熊野市だけである。実際のところ、文献を調べても熊野市(旧紀和町)以外はほとんど記録されていない。
 その熊野市の次に容易に姿が見られそうなのは、既知産地と距離が近い紀宝町なので、この日はここを訪れてみた。



 陽が高くなると、やはりここでも決まったようにルーミスシジミが現れた。これで紀宝町のルーミスを撮影することができた。といっても特に顔が違うわけではない。

静止するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日
静止するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日

 岩上の流れで吸水する姿。今年何回か見たルーミスでは、河原の岩に止まる姿はよく見るが、実際に口吻を伸ばして吸水する姿を見るのはあまりなかった。よほど林内が乾燥しているのだろう。

静止するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日
静止するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日

 背の低いシダに止まる姿。ゼフィルスなどの場合、LEDライトなどで照らして翅を開かせて撮影するという手法が確立されている。これは活動前に体を温めるために太陽に向かって翅を拡げるような行動を利用したものと理解しており、そのため避暑に降りてくるルーミスシジミでは効果がないだろうと思っていた。ところが、撮影仲間が今年チャレンジしたところ、LED照射でも開いたとのこと。やはり何事も思い込みはいけない。

静止するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日
静止するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日

 そこで私も試したところ、半分だけだが翅を開いてくれた。ただ、どのような個体でも開くということはなく、LED光を照らすと逃げるようなそぶりを見せる個体はダメだった。

静止するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日
半開翅するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日

 岩の上の日当たりのいいところに静止する個体も見かけた。暑いからこそ涼みに降りてくるという理解なのだが、それならばそんなに陽の当たる暑いところに降りなくてもいいのにと思ってしまう。LED照射での開翅も含めて、まだまだルーミスへの理解が足りないというところか。

静止するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日
静止するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日

 昼前には薄暗い斜面のシダの葉上に静止する個体を見かけた。触覚は揃えて突き出しており、いかにも休憩モードである。午前中の早い時刻は、谷を歩いているとルーミスがを何度も飛び立ったのだが、暑くなるにつれて見かける数は少なくなっていた。おそらく他の個体もこのような感じで葉陰、岩陰でじっとしているのだろうと思う。

静止するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日
静止するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日

 こういう個体は逃げることが少ないので、数センチまで接近して広角で撮影できる。

静止するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日
静止するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日

 岩上に静止している個体を飛ばせてパストで撮影した。後翅の青い部分が広いのでおそらく♀と思われる。

飛翔するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日
飛翔するルーミスシジミ(飛び立ち) 三重県紀宝町 2020年8月16日

 下の個体はとまる場所を求めて飛んでいるところを撮影したもので、後翅の青い部分が狭いので♂だと思う。

飛翔するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日
飛翔するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日

 下も♂らしい個体。
 飛翔するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日
飛翔するルーミスシジミ 三重県紀宝町 2020年8月16日

 こうしてなんとか紀宝町のルーミスシジミを撮影することができた。紀宝町のルーミスシジミの記録は意外にも新しく、2014年2月23日が最初であり、その後の追加記録はない。もちろん未発表の記録もあるだろうが、虫屋の年齢層も高くなり、暑い中でヒルやマムシを気にしながら新産地を開拓しようという人も少なくなってきているということだろうと思う。まあ、三重県内の産地集めのような感じできわめてローカルな話題ではある。

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