2021年5月30日 静岡県浜松市 ベニモンカラスシジミ

 何年かぶりで浜松市のベニモンカラスシジミを観に行った。朝8時ころに現地に到着すると、早速 一頭の♀が飛来した。新鮮な個体だが白線の状態はノーマル。このあと近くのイヌツゲの木に移ったが、吸蜜することなく飛び去った。

静止するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日
静止するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日

 前日は何頭かの♂の占有行動などが観られたそうだが、この日は♂の姿を全く見ることができなかった。晴天ではあるものの湿度が少なく、カラッとした涼しさがその理由かもしれない。いつも占有行動がよく観察される場所に蝶が現れないので、ときどきクロウメモドキの葉陰を見回って♀の飛来がないかを確認した。そういう根際の観察で見つけた蛹の殻。今年もこの木で発生したことが確認できた。

食樹の幹のベニモンカラスシジミ蛹殻 静岡県浜松市 2021年5月30日
食樹の幹のベニモンカラスシジミ蛹殻 静岡県浜松市 2021年5月30日

 昼近くなってようやく♀がクロウメモドキに来るようになった。下の個体は左翅の白線はやや流れているが、右翅はノーマルの個体。

静止するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日
静止するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日

 次に飛んできたのは白線が帯状に広がった立派な個体。こういうレベルの個体は、私はこの辺りでしか見たことがない。

静止するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日
静止するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日

 この個体は左右とも同じように白線が流れている。クロウメモドキに飛来した♀は、枝先で腹を曲げるしぐさはするのだが、産卵までは確認できなかった。昼頃に強くなった谷風にあおられて、足場が不安定になったためかもしれない。

静止するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日
静止するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日

 そろそろ終了時刻かと思い始めた頃、一頭の♀がイヌツゲに飛来した。ここではイヌツゲの花で吸蜜する姿が観察されているが、私はこれまでまだ観たことがなかった。口吻を伸ばしながら、花を探している。

静止するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日
静止するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日

 イヌツゲの木は葉陰に隠れるようにごく小さな花がいくつか咲いている。蝶は葉上を歩き回ってそれを見つけて吸蜜していた。花が小さく蜜が少ないのか次々と移動していくのだが、下のように姿がほぼ見えるような場所で吸蜜することはごく少ない。

吸蜜するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日
吸蜜するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日

 たいていは繁みに潜り込むようにして吸蜜するので、なかなかきれいには写せないし、少し深く入るとどこにいるのかさえわからなくなる。

吸蜜するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日
吸蜜するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日

 そしてしばらくたつと出てきて、口吻を伸ばしながらツゲの葉先を歩き回る。この個体は白線が薄く流れている。

静止するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日
静止するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日

 ツゲの葉上を歩きながら、時々小飛して移動する。その時に飛翔姿を撮影した。この個体は赤斑が全く無い。別の♀では小さな赤斑が見えたので、個体変異の幅があるのだろう。真っ黒な翅表だけだとカラスシジミやミヤマカラスシジミと変わらない。

飛翔するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日
飛翔するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日
 
 下は腹側からのショット。

飛翔するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日
飛翔するベニモンカラスシジミ♀ 静岡県浜松市 2021年5月30日

 何年かぶりで浜松市のベニモンカラスシジミを撮影に行った。おそらくここだけで観察されているイヌツゲでの吸蜜も撮ることができ、十分に満足できる撮影行だった。静岡〜長野県境辺りでは裏面の白線が乱れる個体が観られるが。特に静岡県側の個体が顕著なように思う。この辺りは個体数も少なくなり、遺伝的に血が濃くなってきているのかもしれない。

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