2021年7月16日 長野県東御市 ミヤマモンキチョウ

 ミヤマモンキチョウの浅間山亜種のいわゆるアサマモンキを撮影に行った。前回、この山塊で撮影したのは2008年なので10年以上経過したことになる。北アルプスのアルプスモンキと比べると、アプローチは圧倒的に容易であるのがうれしい。



 朝早く発生地の繁みを眺めているとクロマメノキの葉上に静止する新鮮な♀を見つけることができた。少し前に見たときにはここにはいなかったはずなので、陽が高くなるにつれて葉陰から這い出して来るのかもしれない。ピンクの縁毛がそろったきれいな個体である。

静止するミヤマモンキチョウ♀ 長野県東御市 2021年7月16日
静止するミヤマモンキチョウ♀ 長野県東御市 2021年7月16日

 まだ飛び立つような活性でははないので、腕を伸ばして環境を入れて広角で撮影した。

静止するミヤマモンキチョウ♀ 長野県東御市 2021年7月16日
静止するミヤマモンキチョウ♀ 長野県東御市 2021年7月16日

 8時40分ころ、クロマメノキの枝先で翅を伸ばしている♂を見つけることができた。新鮮な本種の翅の縁毛は鮮やかなピンクであるが、この個体は更に濃い赤色をしている。後翅表の前縁が白く見えているので♀かと思っていたが、これは♂だった。この部分は展翅された標本でも前翅に隠れるので、♂のここが白いというのは知らなかった。まだ翅が柔らかいので、風が吹くと少しなびいていた。

静止するミヤマモンキチョウ♂ 長野県東御市 2021年7月16日
静止するミヤマモンキチョウ♂ 長野県東御市 2021年7月16日

 これも背景を入れて撮影。

静止するミヤマモンキチョウ♂ 長野県東御市 2021年7月16日
静止するミヤマモンキチョウ♂ 長野県東御市 2021年7月16日

 この個体が飛べるようになるまで、何度か他の♂が接近した。誤求愛ということになるのだろうけど、この羽化直後の個体は、翅を広げて♂であることをアピールしていた。

誤求愛するミヤマモンキチョウ♂ 長野県東御市 2021年7月16日
誤求愛するミヤマモンキチョウ♂ 長野県東御市 2021年7月16日

 陽が高くなるにつれてあちこちで飛び回る姿を見かけるようになった。♂が遊歩道わきの足元を飛んだ時に上から撮影できた。アサマモンキの特徴である黒い縁取りが幅広いのがよくわかる。

飛翔するミヤマモンキチョウ♂ 長野県東御市 2021年7月16日
飛翔するミヤマモンキチョウ♂ 長野県東御市 2021年7月16日

 高原を飛翔する♂。ここでは10日ほど前から発生していることが伝えられていた。発生初期は多数のモンキチョウの中に少数のミヤマモンキチョウが混じるという状況だったそうだが、この日はミヤマモンキチョウだけしか観られなかった。これは撮影には好都合だが、たくさんいたというモンキチョウは何処に行ってしまったのだろう?

飛翔するミヤマモンキチョウ♂ 長野県東御市 2021年7月16日
飛翔するミヤマモンキチョウ♂ 長野県東御市 2021年7月16日

 求愛飛翔する♂♀。こういう薄い雲が広がるような空模様が撮影には絶好の条件になる。

求愛飛翔するミヤマモンキチョウ♂♀ 長野県東御市 2021年7月16日
求愛飛翔するミヤマモンキチョウ♂♀ 長野県東御市 2021年7月16日

 花で吸蜜する姿も多くみられた。もっとも頻度が高いのはネバリノギランなのだが、これはあまり写真映える花ではないのが残念。

吸蜜するミヤマモンキチョウ♂ 長野県東御市 2021年7月16日
ネバリノギランで吸蜜するミヤマモンキチョウ♂ 長野県東御市 2021年7月16日

 ♀も長い時間、この花で吸蜜していたのを見かけた。

吸蜜するミヤマモンキチョウ♀ 長野県東御市 2021年7月16日
ネバリノギランで吸蜜するミヤマモンキチョウ♀ 長野県東御市 2021年7月16日

 ニガナも主要な吸蜜植物となる。

ニガナで吸蜜するミヤマモンキチョウ♂ 長野県東御市 2021年7月16日
ニガナで吸蜜するミヤマモンキチョウ♂ 長野県東御市 2021年7月16日

 ヒースに埋もれるように咲いているコケモモでも吸蜜した。

吸蜜するミヤマモンキチョウ♀ 長野県東御市 2021年7月16日
コケモモで吸蜜するミヤマモンキチョウ♀ 長野県東御市 2021年7月16日

 湿原に咲くアヤメでの吸蜜を観察した。青い花と黄色い蝶のコントラストが鮮やか。こんなに外側の花びらに止まって吸蜜できるものかと思っていたが、蝶が口吻を伸ばしているあたりが蜜標とよばれて虫に蜜のありかを示すものだそうだ。この奥に蜜があるので、これではまだ訪花というべきレベルのものかもしれない。でも写真としてはこのくらいの位置に止まるのがいい感じである。

吸蜜するミヤマモンキチョウ♂ 長野県東御市 2021年7月16日
アヤメを訪ずれたミヤマモンキチョウ♂ 長野県東御市 2021年7月16日

 食樹であるクロマメノキでも吸蜜するが、これは埋もれるような花なので全身が写せるような場所に止まることは少ない。

吸蜜するミヤマモンキチョウ♀ 長野県東御市 2021年7月16日
クロマメノキで吸蜜するミヤマモンキチョウ♀ 長野県東御市 2021年7月16日

 ミヤマモンキチョウは鮮やかなピンクの縁毛が命で、すぐにスレて色あせてしまうので、発生情報を受けたらすぐに撮影に出かける必要がある。しかし前にも書いたように、その頃は多くのモンキチョウの中に少数が混じる程度とのことであるから、撮影時期の見極めは微妙である。今回は絶好の空模様の下でモンキチョウは全くおらず、ミヤマモンキチョウは♂♀とも羽化直後の新鮮な個体を撮影できたので、非常に良いタイミングだったと思う。これは撮影仲間からの詳細な情報の賜物である。

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