2021年10月18〜24日 沖縄県石垣島 16 バナナセセリ

 情報をいただいてバナナセセリを撮影した。というか今回の撮影旅行の主目的はバナナセセリの撮影だった。私とバナナセセリの接点は過去に一度だけで1973年8月7日のみ。夏休みに3週間かけて八重山〜奄美大島へ採集旅行に出かけていた時に石垣島で出会った虫屋に教えてもらい、那覇港で奄美への船の乗り継ぎの数時間に与那原のバナナ畑で数頭の成虫と幼虫を採集している。それから50年近く、沖縄には何度も行っているのにこの蝶に出会うことはなかった。まあ、ビールが恋しくなる時刻に活動する蝶であり、探してもみなかったのではあるが・・・。
 バナナ畑の傍らでセセリを待っていると、ヤエヤマオオコウモリが飛んできて近くの枝に止まった。バナナの実が目当てなのだろうが、傍らで撮影している私の存在が気になるようだ。




 バナナの葉には大きな筒状の巣がいくつかぶら下がっている。



 そのうちの一つを開いてみると、白い大きな幼虫が出てきた。



 バナナセセリの活動時刻は日の出および日の入り前後の30分間ほど。今回はその詳細な情報をいただいているので、確実に撮影することができた。

 最初はバナナの花で吸蜜する姿。驚くほど長い口吻を鞭のように伸ばして蜜を吸う。

吸蜜するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月21日
吸蜜するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月21日

 花に飛来した姿を自然光で撮影できた。

吸蜜するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月24日
吸蜜するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月24日

 同じ場面をフラッシュを使っても撮影している。この場合は目玉が赤く光って写る。

吸蜜するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月24日
吸蜜するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月24日

 バナナセセリは暗い中での撮影になるため、二年くらい前から大光量の自作LEDライトを準備していた。そして自宅近くのクロコノマチョウやオオヒカゲなどで何度か使い勝手をチェックして、おおよそ実戦で使える段階までこぎつけたシステムを持参した。

飛翔するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月21日
飛翔するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月21日

飛翔するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月21日
飛翔するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月21日

 バナナセセリは活動時刻に待機していても姿を観ない時もある。飛来して目撃するのは毎日、1〜2頭だろうか。

飛翔するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月21日
飛翔するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月21日

 時には二頭が卍飛翔するときもあり、その姿を偶然に撮影することができた。 

飛翔するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月21日
飛翔するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月21日

ここではきれいな個体を選んで掲載しているが、日によっては悲しくなるほどの破損個体しか見ない時もあった。

飛翔するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月21日
飛翔するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月21日

はじめのうちは撮影チャンスを稼げる電子シャッターを使っていたのだが、せっかく姿を捉えてもローリングシャッター歪が気になるときがあった。左右の翅がいびつな方向にねじれるのはちょっと残念に思う。そのため日程の後半は撮影枚数は極端に落ちるがメカシャッターで撮影するようにした。

飛翔するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月23日
飛翔するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月23日

日本産蝶類標準図鑑をみると、沖縄本島産と石垣島産とでは前翅中室の斑紋の形状に差があるようである。沖縄本島のものはアメリカ軍によりベトナム周辺から持ち込まれたというのが通説だが、石垣島産はどこから入り込んだのだろうか。次は沖縄本島産も撮影してみたいと思う。 下の個体は腹端の形から見て♀なのだろうと思うが、明確にはわからない。

飛翔するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月21日
飛翔するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月21日

 朝、明るくなってバナナの枯葉に止まって動かなくなった個体。時刻は6時56分。撮影最終日の朝だったので、夕方までそのままでいたのかどうかは確認できていない。

静止するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月24日
静止するバナナセセリ 沖縄県石垣島 2021年10月24日

 私がバナナセセリにチャレンジするのは初めてではない。前回は2015年11月2日で、今回と全く同じ場所。その当時から未撮影種としてバナナセセリを意識しており、島内を移動していた時に見つけたのがこの場所だった。ここではバナナの花は手が届く高さにいくつも咲いているし、足場が良いので暗くなっても安全であると感じた。ただ同時にバナナセセリには少し開放的すぎるようにも思った。手元の記録をみると、日の入り時刻を挟んだ17:30〜18:20の間ここで滞在したが、バナナセセリは見ることができなかった。今でも活動時間に見かけるのは1〜2頭であり、日によっては見かけない時もあるようなので、6年前のその当時はもっと少なかったのかもしれない。あるいは開放的すぎると感じた意識が邪魔をして見えなかったのかもしれない。その時に撮影した環境写真を現在と比べてみると、今年の方がバナナの木の丈が少し高い程度で、それほど変わってはいない。バナナの木は実をつけると切り倒すということだが、実を取るような手入れをされているようにも見えず、非常に安定している。しばらくこのままの状態が継続するのを期待したい。

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