2024年7月6日 北海道 3 別海町 イシダシジミ 1

 今回の目的種というか北海道行きを決めた理由はこの蝶を撮影することだった。イシダシジミというのはいうまでもなくアサマシジミの北海道亜種なのだが、我々の年代の蝶屋にはイシダシジミという方が収まりが良い。現在の北海道で最も情報管理が厳しいのはこのイシダシジミなのだろう。私も2011年に帯広市の近くの耕作地脇の草地で地元の方の案内で撮影させていただいたが、今となってはもうそのようなポイントは残っていないのだと思う。今回、幸いにも情報をいただいてこの蝶を撮影できる機会に恵まれた。現時点では撮影できる程度の個体数は残っているが、いついなくなるかわからない蝶だし、これから先も訪れる機会があるかどうかもわからないので、二回に分けて少し多めに掲載しておく。

 まだ朝露がのこるポイントの草地で探してみると、新鮮な♂を見つけることができた。霧雨が降っており、まだ不活発。 

静止するイシダシジミ♂ 北海道別海町 2024年7月6日
静止するイシダシジミ♂ 北海道 別海町 2024年7月6日

 新鮮な個体でやさしい光の中で翅を開いてくれた。一ケ月前に長野県小谷村で撮影したアサマシジミと比べて、やや灰色がかった水色の明るい色調だった。

静止するイシダシジミ♂ 北海道別海町 2024年7月6日
静止するイシダシジミ♂ 北海道 別海町 2024年7月6日

 下は別の個体で上の個体よりやや外縁の黒帯が太く、翅脈が少し黒くなっている。

静止するイシダシジミ♂ 北海道別海町 2024年7月6日
静止するイシダシジミ♂ 北海道 別海町 2024年7月6日

静止するイシダシジミ♂ 北海道別海町 2024年7月6日
静止するイシダシジミ♂ 北海道 別海町 2024年7月6日

 草地に咲くフランスギクを訪れた♂。この花はヨーロッパ原産の帰化植物で北海道ではあちこちで見られる。

静止するイシダシジミ♂ 北海道別海町 2024年7月6日
静止するイシダシジミ♂ 北海道 別海町 2024年7月6日

静止するイシダシジミ♂ 北海道別海町 2024年7月6日
静止するイシダシジミ♂ 北海道 別海町 2024年7月6日

 周囲の草地を入れて撮影。葉上にはまだ霧雨による雨粒が残っているが、こうしたしっとりとした雰囲気がこの蝶には似合う。

静止するイシダシジミ♂ 北海道別海町 2024年7月6日
静止するイシダシジミ♂ 北海道 別海町 2024年7月6日

 ♀も何頭か観ることができたので、鮮度のよい個体を選んで撮影した。

静止するイシダシジミ♀ 北海道別海町 2024年7月6日
静止するイシダシジミ♀ 北海道 別海町 2024年7月6日

 イシダシジミ♀の翅表はほとんど真っ黒で、信州で見かけるアサマシジミのような後翅表外縁に並ぶ橙色斑列はない。下は食草であるナンテンハギに止まって開翅している個体。

静止するイシダシジミ♀ 北海道別海町 2024年7月6日
静止するイシダシジミ♀ 北海道 別海町 2024年7月6日

 ノコギリソウの白い花でも吸蜜した。

静止するイシダシジミ♀ 北海道別海町 2024年7月6日
静止するイシダシジミ♀ 北海道 別海町 2024年7月6日

 ナンテンハギの花に止まる♀。この個体は吸蜜はしていないが、前翅が立ったいい姿の個体である。

静止するイシダシジミ♀ 北海道別海町 2024年7月6日
静止するイシダシジミ♀ 北海道 別海町 2024年7月6日

 ヒメジョオンで吸蜜するV字開翅の♀。

静止するイシダシジミ♀ 北海道別海町 2024年7月6日
静止するイシダシジミ♀ 北海道 別海町 2024年7月6日

 同じ♀が翅を開いてくれた。黒褐色一色のキズ一つない新鮮な個体だった。

静止するイシダシジミ♀ 北海道別海町 2024年7月6日
静止するイシダシジミ♀ 北海道 別海町 2024年7月6日

 やはりフランスギクは良い吸蜜源になっているらしいが、もともと自然にある花ではないのでちょっと残念。

静止するイシダシジミ♀ 北海道別海町 2024年7月6日
静止するイシダシジミ♀ 北海道 別海町 2024年7月6日

静止するイシダシジミ♀ 北海道別海町 2024年7月6日
静止するイシダシジミ♀ 北海道 別海町 2024年7月6日

 下の個体は珍しく後翅翅表外縁に橙色斑が少し現れている。ちょっとスレていたのが残念。

静止するイシダシジミ♀ 北海道別海町 2024年7月6日
静止するイシダシジミ♀ 北海道 別海町 2024年7月6日

 ナンテンハギの花の上で求愛行動をとる♂♀。この直後に♀は飛び去り、交尾は成立しなかった。

求愛するイシダシジミ♂♀ 北海道別海町 2024年7月6日
求愛するイシダシジミ♂♀ 北海道 別海町 2024年7月6日

 イシダシジミは50年ほど前の学生時代に今は廃線となっている国鉄標津線の沿線で沢山採集した思い出があるが、同じような経験がある方も多いのではないだろうか。もともと線路脇の法面などの人手がはいって草地が維持されているような不安定な環境で生きながらえてきたような蝶なので、人の介入による環境の変化には弱いのだろう。そのような状況なので昔は沢山いたのだが、それがどんどん衰退していき、いまでも確実に生息している場所はほとんどなってしまったし、情報として公になることもなくなった。ここのイシダシジミが末永く飛び続けることができることを願うばかりである。

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