2023年9月中下旬 三重県鈴鹿市 クロコノマチョウ 1

 これまでクロコノマチョウの飛翔は、わざわざ県南部の熊野市あたりで撮影していた。自宅から県南部の熊野までは2時間以上かかるのだが、ルーミスシジミやサツマシジミのついでに撮れることと、現地の撮影環境がよかったので立ち寄ることが多かった。しかしクロコノマチョウは自宅周辺でも多く観ることができる蝶なので、昨シーズン終了後から、近場で撮影ポイントになりそうなジュズダマの群落を探していた。あちこち歩いてみるとジュズダマは耕作放棄地やその周辺の空き地に多く生えていることがわかった。でも何処にでもあるというわけではなく、特定の川筋に多いなどの偏りもあるようだ。下は耕作放棄地に生じた高さ2mくらいの群落でびっしりと茂っている。さすがにこれではちょっと密生しすぎだと思うのだが、イノシシが遊んだ跡が適当な空間を作っているので、生息環境としては悪くないのだろう。



 葉を裏返すと卵が見つかる。下のように数卵がまとまって産まれていることが多い。

クロコノマチョウ 卵 三重県鈴鹿市 2023年9月10日
クロコノマチョウ 卵 三重県鈴鹿市 2023年9月10日

 下は孵化が間近になり、幼虫の黒い頭が透けて見えるようになった卵。

クロコノマチョウ 卵 三重県鈴鹿市 2023年9月10日
クロコノマチョウ 卵 三重県鈴鹿市 2023年9月10日

 卵を見つけるには適当に葉を裏返してみるしかないが、幼虫は食痕を目当てにすると簡単に見つけることができる。若齢時は集団でいることが多く、この集団は頭の丸い初齢と角が生えた二齢幼虫の集団である。

クロコノマチョウ 若齢幼虫 三重県鈴鹿市 2023年9月10日
クロコノマチョウ 若齢幼虫 三重県鈴鹿市 2023年9月10日

 若齢時には数頭が行儀よく並んで静止しているのを見ることができる。

クロコノマチョウ 若齢幼虫 三重県鈴鹿市 2023年9月10日
クロコノマチョウ 若齢幼虫 三重県鈴鹿市 2023年9月10日

 中齢では摂食量が増えるためか、しだいに単独でいることが多くなる。

クロコノマチョウ 中齢幼虫 三重県鈴鹿市 2023年9月15日
クロコノマチョウ 中齢幼虫 三重県鈴鹿市 2023年9月10日

 幼虫の頭の黒さにはいろいろあり、この個体は真っ黒。

クロコノマチョウ 中齢幼虫 三重県鈴鹿市 2023年9月10日
クロコノマチョウ 中齢幼虫 三重県鈴鹿市 2023年9月10日

 下は顔の周囲のみが黒い。こういうタイプが多いように思う。

クロコノマチョウ 中齢幼虫 三重県鈴鹿市 2023年9月10日
クロコノマチョウ 中齢幼虫 三重県鈴鹿市 2023年9月10日

 ジュズダマの食痕ばかりを目当てに探していると、イナゴのそれと見間違うことがある。開放的な空間の株にある食痕はイナゴのものであることが多いようだ。

イナゴ 三重県鈴鹿市 2023年9月13日
イナゴ 三重県鈴鹿市 2023年9月13日

 下の右の幼虫は終齢でやや体が縮んで透明感があるので蛹化間近なのだろう。その左に写っている幼虫も同じような大きさなので、同じ卵塊から産まれた兄弟姉妹なのかもしれない。

クロコノマチョウ 終齢幼虫 三重県鈴鹿市 2023年9月15日
クロコノマチョウ 終齢幼虫 三重県鈴鹿市 2023年9月15日

 前蛹はジュズダマの低い位置の葉の裏面中脈にぶら下がっているのを見つけることができた。

クロコノマチョウ 前蛹 三重県鈴鹿市 2023年9月15日
クロコノマチョウ 前蛹 三重県鈴鹿市 2023年9月15日

 二日後に蛹になっているのを確認した。

クロコノマチョウ 蛹 三重県鈴鹿市 2023年9月17日
クロコノマチョウ 蛹 三重県鈴鹿市 2023年9月17日

 黒くなった蛹も見つけることができた。羽化間近と思っていたが、数日後に確認したところ死んだ蛹だった。そういえばよく見ると背中にキズがあるようだ。

クロコノマチョウ 蛹 三重県鈴鹿市 2023年9月15日
クロコノマチョウ 蛹 三重県鈴鹿市 2023年9月15日

 一週間ほど経過して様子を見に行ったところ、ジュズダマの先端の葉は激しく食害されており、幼虫はほとんどいなくなっていた。根元をかき分けて探してみると、蛹がたくさんぶら下がっていた。ちょっとボケているが下の画面には4個。さらに画面には入らなかったが、すぐ上の葉に1蛹、下の葉に前蛹が1。蛹を何日間も観察していると、ある日その姿が消えてしまうことが何度かあった。地面に近い低いところの蛹がそうなりやすい感じがしたので、ネズミなどの敵に襲われたのかもしれない。


クロコノマチョウ 蛹 三重県鈴鹿市 2023年9月22日

 すでに羽化した秋型の成虫も飛んでいたが、幼虫の状態からみると成虫が本格的に発生するのは9月末頃からだと思う。

クロコノマチョウ  三重県鈴鹿市 2023年9月10日
静止するクロコノマチョウ  三重県鈴鹿市 2023年9月10日

 下は夏型の破損個体で、ちょうど季節型の切り替わり時期になる。このように9月中頃は卵〜夏と秋の成虫まで、すべてのステージを見ることができることになる。

静止するクロコノマチョウ  三重県鈴鹿市 2023年9月15日
静止するクロコノマチョウ  三重県鈴鹿市 2023年9月15日

 普段は蝶の幼生期の撮影はあまりしないのだが、他に撮る蝶が少なくなったこともあり、じっくりと狙ってみた。蒸し暑い中でジュズダマに付いている幼虫を探してみたのだが、こういうのもなかなか面白いものだ。今回は写真の枚数が多くなったので、ほとんど幼生期だけでまとめたが、これから来月にかけては予定通り成虫の開翅から飛翔を狙ってみようと思う。

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