2023年10月18〜25日 沖縄県八重山 19 シロオビヒカゲ                    

 石垣島に一週間滞在した最大の目的はシロオビヒカゲの飛翔を撮影することだったので、夕刻は毎日のように竹の林に出かけた。



 何日も通っているとシロオビヒカゲの撮影方法というのがぼんやりとわかってくる。もちろん昼間でも竹藪の周りでその姿を見ることはできるのだが、周囲に油断なくスクランブル発進に備えた精悍な姿は、夕刻のテリハリ時をおいては見ることができないだろう。

静止するシロオビヒカゲ♂ 沖縄県石垣島 2023年10月19日
静止するシロオビヒカゲ♂ 沖縄県石垣島 2023年10月19日

 現地での観察では♂が活発に飛ぶのは日没前15分くらいからなのだが、♀はその1時間くらい前に少し活動するのを見かけるくらいだった。下の♀は少し活動したあと、竹の高いところの節で吸汁した。

静止するシロオビヒカゲ♀ 沖縄県石垣島 2023年10月22日
静止するシロオビヒカゲ♀ 沖縄県石垣島 2023年10月22日

 そこから飛び立った時を撮影できた。

飛翔するシロオビヒカゲ♀ 沖縄県石垣島 2023年10月22日
飛翔するシロオビヒカゲ♀ 沖縄県石垣島 2023年10月22日

 このように♀はまだ明るいうちにも飛翔することがあった。こういう時に飛んでくれれば、前翅の白帯が目立つので♂よりも視認しやすく追いやすい。

飛翔するシロオビヒカゲ♀ 沖縄県石垣島 2023年10月22日
飛翔するシロオビヒカゲ♀ 沖縄県石垣島 2023年10月22日

 でも♂とは違って活動そのものが少なく、この時刻の活動は見られない日も多かった。

飛翔するシロオビヒカゲ♀ 沖縄県石垣島 2023年10月22日
飛翔するシロオビヒカゲ♀ 沖縄県石垣島 2023年10月22日

 毎日のように夕刻の竹林に通っていても、♂の活動は安定してみられるものではないこともわかってきた。それはここに掲載できた写真が10月22日撮影のものが大半で19日分が少しだけということからもわかるだろうか。かろうじて姿を捉えた飛翔姿を何枚か掲載しておく。かなりの光量のLED光源を使っているので明るく見えるが、実際にはほとんど蝶が視認できない暗い状態である。

飛翔するシロオビヒカゲ♂ 沖縄県石垣島 2023年10月22日
飛翔するシロオビヒカゲ♂ 沖縄県石垣島 2023年10月22日

 活動のはじめ頃にはテリ位置を確定させるためか盛んに追尾飛翔が行われる。

飛翔するシロオビヒカゲ♂ 沖縄県石垣島 2023年10月22日
飛翔するシロオビヒカゲ♂ 沖縄県石垣島 2023年10月22日

 夕暮れの雲を背景にした卍飛翔。

飛翔するシロオビヒカゲ♂ 沖縄県石垣島 2023年10月22日
飛翔するシロオビヒカゲ♂ 沖縄県石垣島 2023年10月22日

飛翔するシロオビヒカゲ♂ 沖縄県石垣島 2023年10月19日
飛翔するシロオビヒカゲ♂ 沖縄県石垣島 2023年10月19日

飛翔するシロオビヒカゲ♂ 沖縄県石垣島 2023年10月22日
飛翔するシロオビヒカゲ♂ 沖縄県石垣島 2023年10月22日

 下はマルチ発光などという高度な技術ではなく、連写で捉えた一連の姿を背景を合わせて貼り付けただけのお遊びのような画像であることをお断りしておく。それでもこれを見ているとわかってくることがある。まず、羽ばたき回数は17から18回/秒になる。これはカメラの連写速度が50枚/秒の撮影条件ということと、翅を打ち下ろした同じ姿が2つ置いて現れていることから推定できる。また蝶の飛翔速度は約3m/秒となる。これも連写速度と蝶の画面上での移動距離から推定できる。

飛翔するシロオビヒカゲ♂ 沖縄県石垣島 2023年10月22日
飛翔するシロオビヒカゲ♂ 沖縄県石垣島 2023年10月22日

 高速で飛翔する姿がターゲットになる蝶としてはスミナガシがあるが、体感的にはスミナガシよりも撮影の難易度ははるかに高いように感じた。ところが意外にも飛翔速度はスミナガシよりもかなり遅い。以前の試算ではスミナガシの場合は普通に飛んでいるときでも約5m/秒、追尾飛翔でテリ位置に戻るときには10m/秒近くにもなり、シロオビヒカゲの速度の2〜3倍になる。それでもシロオビカゲの方が難しく感じるのは、飛翔時の暗さのせいだろう。この蝶は日没の15分前くらいから飛び始めるが、蝶を視認できるのはせいぜい10分間くらいしかない。スミナガシの活動も午後遅めとはいえ、まだまだ明るい時間帯であるし、活動している時間も長いので撮影のチャンスは多い。

静止するシロオビヒカゲ♂ 沖縄県石垣島 2023年10月22日
静止するシロオビヒカゲ♂ 沖縄県石垣島 2023年10月22日

 シロオビヒカゲの夕刻のテリ飛翔をねらうのは初めてではない。その時のカメラはキヤノンのEOS7Dだった。フラッシュを同調していたので、外部電源をつないでいたとはいえ、実際の連写速度は10枚/秒もなかったと思う。それでも何とか姿を捉えられていたので、OM-1にLED発光の組み合わせならば楽勝かとも思っていたが実際にはなかなか厳しく、一筋縄ではいかなかった。撮影時刻が同じ夕刻に重なるバナナセセリを棚上げし、今回はシロオビヒカゲに集中したが、思い描いたような成果は上げられなかったのが残念だった。でもこれも次につながる楽しみでもある。

 〈戻る〉